掘出物 見つけました ブログ

動き回る翻訳者の運命的な(!)出会いを紹介します

大家さん

f:id:sachi-studio:20191229215129j:plain

skycoco さんによる写真ACからの写真

今朝、すぐに乾かしたい服があって、早朝からコインランドリーに行った。
帰りにばったり、大家さんに会った。

というか、自転車に乗っていて小柄なご婦人とすれ違ったとき、何気なく会釈したら、その方が何か反応した。しばらく行ってもこっちを見ていて、知っている人みたいだ。お互い近づいたら大家さんだった。どうも私は視力がさらに悪化しているらしい。

大家さんというのは、前に住んでいた家の大家さんだ。今の家に住む前、新婚当時、借家に住んでいた。隣に大家さんが住んでいる、昭和な感じの家だった。大家さんは電気工事をやっている電気屋さんで、ご主人は木彫が、奥さんは折り紙が趣味だった。奥さんは植物が好きでいつも店先の植木鉢のお花をきれいに手入れしていた。残念ながら、家はつい、昨年取り壊されてしまった。

この家に住んでいたころ、若手として昼夜を問わず仕事をして、飲みにももれなくついて行って遅く帰ったりしていた。お友達が夫に貸してくれた素敵なビートでドライブにいったりもした。その後、妊婦になって、つわりで信じられないぐらい体調が悪くなって入院したりした。
そして、生まれてからの育児休暇中も別の原因で体調が悪いままで、産後を助けてくれた母が家に帰った後、元気なく赤ちゃんのマドと家で過ごしていた。そんなとき、大家さんは、よく地元から送ってきたといって、野菜をおすそわけしてくれ、様子を見に来てくれた。昔は商店街であった通りに面していて、事務所みたいな少し変わった作りの家であったが、駅からの道も好きで、私たちはそこの暮らしがとても気に入っていた。


やがて、マドが1歳になり、会社に復職するのを機に、母と本格的に同居することになり、もう少し広い今の家に引っ越した。それからは、日々の生活に追われ、大家さんとも疎遠になってしまった。

2年ほど前のある夜、駅前でばったり大家さんに再会した。ご主人は震災の年に亡くなられたという。ご自身もがんと折り合いをつけながら、今も元気に地域の活動に参加されているということだった。母と同い年であることも分かった。

いつか、お世話になったお礼にきれいなお花の鉢植えをもって行きたいな。この近所の昔の商店街の話をお聞きしたいなと思いながら、あっという間にまた1年、2年と過ぎていった。お宅も処分されて、いよいよもう会えないのかと思ったら、また最近、半年ぐらい前にばったりうちの前でお会いした。近くで毎朝ラジオ体操をされているという。

今朝も、ちょうどラジオ体操の帰りだったそう。素敵な手編みの帽子をかぶられて、年齢にはとても見えない。近所づきあいもあまりない街中に住んでいて、私にとっては大切な隣人だ。本当に縁があると思う。

来年こそはお花の鉢植えを差し上げたいと思う。