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動き回る翻訳者の運命的な(!)出会いを紹介します

私の最後の七日間

昨晩、テレビで「ふたりの“最期の七日間”」という番組を見た。

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がんで70才でなくなった女性が、夫にあてて、余命いくばくもない時に残した「最後の七日間はこう過ごしたい」という詩がテーマとなっている。ご子息は「こんなささやかな希望をもっていたのだなあ」と言っていたが、とんでもない。そこから、彼女の丹念な生きざまが垣間見え、なんて立派なんだろうと思った。

翻って、私がもうそろそろ最後の「七日間」だと思った時の詩は、絶対こうはならない。

パパちゃん、大変だ。あと私も七日間ぐらいだと思うの。すぐにできるだけ、ごみ袋を買ってきて。「今から片付けるの?昔の引っ越しの時も大変だったなぁ。」

料理もっと上手になりたかったんだよね。自分で作って家族で食べたいものがいっぱいあったから、料理本がこんなに。「まあ、今の料理でそこそこおいしかったから、いいじゃないか。」バサバサバサ。

実は刺繍を趣味にしたかったんだ。何回かやったことがあるんだけど、楽しかったなあ。私って雑なようで、すごい細かい作業ができることもあるんだよ。なんにしてもこの世では趣味に手芸をやる時間はなかったね。バサバサバサ。

最後まで、中国語を仕事にしてたけど、思うほど上手にならなかったね。完璧にしたいと思ってたから、本がこんなに。「もう、十分上手になったからいいじゃないか。」「もうちょっと上手になりたかったよ。」バサバサバサ。あらやだ、ほとんど捨てたと思ってたのに、英語の本も結構ある。いじましい。

ビジネス本も読んでないから捨てられなくて、小説読む生活にも憧れてた。「この期に及んで、ビジネスはないだろう。小説もKindleにだって入ってるんだろう?片付け終わったら読めるさ。」バサバサバサ。

服も相当捨てたんだけどね。もう、着倒してるもんね。捨て捨て捨て。あ、この着物をアレンジして作っていただいた服だけは置いとこうか。誰かこういうのが好きな人にあげて。娘どうかな?

書類とりあえず、全部捨てとくから。もしないと困るまずい役所の手続きとかってなんだっけ?そもそも、公私ともにこんな楽しいことやったなっていうのを整理したかったんだよね。随分前に大整理したんだけどな。「もう、いいよ。大体覚えてるから。」

おばあちゃんのもの、もっとスッキリ整理しときたかったんだけどね。なかなか、自分のものじゃないと余計に難しかったね。でも私の代までとっといてあげたんだからもういいよね。私と一緒に処分だ。

デジタルデータも整理しようと思ってたんだけどね。もう全部消しちゃえばいいか。あっても困るもんね。

あー、大変だった。袋だらけになっちゃった。娘に会えるかな。今日何してるんだっけ。海外出張?仕方ないよね。ま、テレビ電話でよく話してるし。「ごみは捨てろ」と繰り返し言っておかないとね。今日電話しよう。

ごめんね、パパちゃん。最後までこんなに慌ただしくて。「いつものことじゃないか。」一応若い時にも努力してみてこれなんだ。ごめん。ま、生きてる間に手を付けられただけよかったか。

うーん、めっちゃリアル。いやだ。最後はもっと静かに楽しく過ごしたい。やることない状態になってみたい。思い出話とかしてみたい。片付けは身体が動く間にやっとかないとだめだ。引き続き、片付け頑張ろう。今回片づけたらもう増やさないようにする。結局、そんなに大事だと思っていないものを前もって捨てるのが苦手だから、ダメなのかな。

ちなみに、素敵なほうの「最後の『七日間』」は本にもなっている。 番組で、おやっと思ったのは、このご夫婦は私たちより大分上の世代の方だが、ご夫婦で下の名前で呼び合っておられた。本当に自立した、生活に美学をお持ちの方ですばらしい。

妻が願った最期の「七日間」

妻が願った最期の「七日間」